《MUMEI》

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わたしは、でもさぁ…と、つづける。


「あかねさんも、ガッツないよね。あれくらいの話で真っ青になるなんて。結婚しても、そんなんじゃ、上手くいかないんじゃない?」


そう言って、わたしは冷めきった声で笑った。あの時のあかねさんの顔を思い出すと、可笑しくてたまらなかった。

ひとりで電話に向かって笑っているわたしを不審に思ったのだろう。遊歩道を歩いていた青年が、一度、チラリとこちらを見た。
不躾な視線を向けたあと、彼は無関心な表情を浮かべて目を逸らし、わたしのまえを通りすぎていった。

全く反省しないわたしに、尚はいよいよ怒り出し、電話の向こうで怒鳴りつけた。


『ふざけんな!上手くいかなくさせようとしてんのは、お前だろ!!』


わたしは黙り込んだ。

尚は鋭い声で、叫ぶように言う。


『確かに昔、俺はお前が好きだったよ!でも、お前は俺の気持ちを拒んだ!それで全部終わったじゃないかッ!!』


わたしは瞬いた。終わった。



−−−全部、終わった…?



携帯を持つ手が、震えた。それは、寒さだけのせいでは、なかった。

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