《MUMEI》
届かない場所
.

尚は落ち着いた声で、つづけた。


『しばらくお前のことを引きずってて、あかねには、今まで寂しい思いをさせた。今は、あいつをだれより幸せにしたいと思ってる』


その台詞に、わたしは叫んだ。


「じゃあ、あかねさんよりもまず、わたしを幸せにしてよ!わたし、独りぼっちなんだよ!!傍にいてよ!!どうしたらいいの!?どうにかしてよッ!!」


悲鳴じみた声に、通行人たちが振り返る。皆、奇妙なものを見るような目つきで、わたしをジロジロ見つめていた。

でも、わたしは気にしなかった。それどころではなかった。必死だった。



今、尚を引き止めなければ、


つなぎ止めなければ、


彼は、行ってしまう。





−−−わたしの手に、届かない場所へ。





.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫