《MUMEI》 届かない場所. 尚は落ち着いた声で、つづけた。 『しばらくお前のことを引きずってて、あかねには、今まで寂しい思いをさせた。今は、あいつをだれより幸せにしたいと思ってる』 その台詞に、わたしは叫んだ。 「じゃあ、あかねさんよりもまず、わたしを幸せにしてよ!わたし、独りぼっちなんだよ!!傍にいてよ!!どうしたらいいの!?どうにかしてよッ!!」 悲鳴じみた声に、通行人たちが振り返る。皆、奇妙なものを見るような目つきで、わたしをジロジロ見つめていた。 でも、わたしは気にしなかった。それどころではなかった。必死だった。 今、尚を引き止めなければ、 つなぎ止めなければ、 彼は、行ってしまう。 −−−わたしの手に、届かない場所へ。 . 前へ |次へ |
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