《MUMEI》 そうして上を見上げたまま、 いきなり翼を広げた。 羽音を立てながら宙に浮く。 俺は慌ててグレイドのズボンの裾を掴んだ。 「ま、待って下さいよ!」 「ん? どうかしたのか?」 「俺…飛べません……。」 「あ…そうだったな。」 一瞬の沈黙の後、 グレイドは苦笑しながら再び着地した。 は、恥ずかしい…。 チラリと自分の翼を盗み見る。 こんな立派な翼が付いているのに……。 俺には広げて、折畳む。 その動作しか出来ない。 バルトンを見ると、 これまた有り得ないといった風に、 大きく目を見開いていた。 グレイドはその光景を見て飽きれたように笑った。 「バルトン、事情は後ほどな。」 「は、はい。」 戸惑うバルトンを余所に、 俺を片腕で抱き上げた。 「うわっ!」 「しっかり掴まっていろ!」 グレイドは再び大きく翼を広げると、 羽音を立てながら勢いよく飛び上がった。 前へ |次へ |
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