《MUMEI》

「そういえば、おまえ相手の顔知ってんの? まったく関係ない奴とか捕まえても意味ないぜ?」
「大丈夫。だいたいの連中は覚えてる」
ユウゴは大きく頷いた。
プロジェクトの考案者である男を殺した時、今と同じようにビルに出入りする人間を見張っていたのだ。
数日間見張り続けた甲斐あって、どんな人間がプロジェクトの幹部なのかということが自然とわかっていた。
ケンイチはユウゴが自信ありそうに頷いたのを見て納得したのか「それならいいけどさ」と織田と共に駐車場へ向かって行った。
二人が視界から消え、ユウゴも移動を開始した。
この場所に座ってビルを見ていると間違いなく不審に思われるだろう。
ビルの入口を任されている警備員は、一般人と違ってユウゴの顔も覚えさせられているはずだ。
「……やっぱ、あそこかな」
ユウゴは呟くように言ってビルの向かいにある建物へと足を向けた。
そこは二階から上の階はどこかの会社のオフィスだが、一階部分だけはカフェとなっていた。
ユウゴは店の中に入ると、適当に一番安いコーヒーを買って席へと向かった。
カウンター席は窓の外を向いているが、外からも丸見えなので座ることはできない。
ユウゴは通路を歩き、カウンター席の後ろに設置されている四人用のボックス席に座った。
この位置からならば、カウンター席に面したガラスから向かいのビルの入口が見えるのだ。

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