《MUMEI》 . わたしはやはり答えなかった。彼は戸惑いながらも言葉を探し、わたしに言った。 「なにしてるんですか?」 「待ち合わせですか?」 「終電、来ちゃいますよ?」 ………。 ほかにも、なにか言ってきたような気がするが、そのどれもわたしの心には、とまらなかった。 ただ、 最後の一言だけ。 「隣、座っても、いいですか?」 その一言だけには、わたしは答えた。初めて、声を出した。 「………どうぞ」 −−−わたしは。 わたしは、尚への想いを終わらせたばかりで、 独りぼっちで、 寂しくて、寂しくて、 冷たい風に身体中が冷え切っていて、 どうしようもなくて、 だれでもいいから、 −−−だれかに、傍に、居てほしかった…。 ****** 前へ |次へ |
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