《MUMEI》

.

わたしはやはり答えなかった。彼は戸惑いながらも言葉を探し、わたしに言った。


「なにしてるんですか?」


「待ち合わせですか?」


「終電、来ちゃいますよ?」


………。


ほかにも、なにか言ってきたような気がするが、そのどれもわたしの心には、とまらなかった。

ただ、

最後の一言だけ。



「隣、座っても、いいですか?」



その一言だけには、わたしは答えた。初めて、声を出した。



「………どうぞ」



−−−わたしは。



わたしは、尚への想いを終わらせたばかりで、

独りぼっちで、

寂しくて、寂しくて、

冷たい風に身体中が冷え切っていて、



どうしようもなくて、



だれでもいいから、





−−−だれかに、傍に、居てほしかった…。





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