《MUMEI》 . −−−それは凍てつくように寒い、冬の日のこと。 わたしは名前も知らない、尚にそっくりな青年の手を引き、適当なホテルへ入った。 暖かいホテルの部屋の、中央にある大きなベッド。 その上で、裸になったわたしたちは、もつれ合うように身体を絡ませ、キスをした。 彼が快楽に顔を歪ませ、もうだめだ…と観念するまで、わたしは彼の身体を、丹念に、執拗に、愛撫をつづけた。 青年は、若かった。みずみずしく、しなやかな逞しさは、今まで適当に付き合った男たちとは、まったく、別物のようだった。 彼の美しい肢体をまえに、わたしの身体はだらし無く、濡れていた。彼の唇が、わたしを愛するたび、自然とわたしの唇からうめき声がもれた。 わたしは彼に、すべてを赦した。 今まで経験したことのない、快楽に溺れた。 青年とつながりながら、わたしは彼の背中に爪を立て、 尚、尚、と、 心の中で、泣き叫んでいた。 −−−そうだ。 わたしは、ずっと、こうしたかった。 尚と、こうやって、 どこか遠いところまで、 二度と帰って来れないような場所まで、 ともに、のぼりつめたかったんだ………。 ****** 前へ |次へ |
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