《MUMEI》

冷静になるんや。


冷静になって考えるんや。


深呼吸を繰り返し、
コート内の先輩を目で追う。


倉木先輩はきっと、


“俺達にしか出来ないこと”


をやったんだ。


必死に先輩の姿に食らい付いて、
プレーの様子を分析する。


俺は頭を使うのは得意な方だ。


特にサッカーに関しては。


分析した結果見えて来る答えが様々で、
その答えを何通りも見出すことが楽しいからだ。


答え次第で、勝敗も決まる。


サッカーは体力や技術面だけでなく、
頭も必要とするスポーツだ。


ただがむしゃらにぶつかりあって良いってもんじゃない。


ん?


何かが胸に引っ掛かった。


同時に、先程の俺のプレーが鮮明に蘇る。


「馬鹿や……俺…。」


両拳をキツく握り締めた。


「何をやってたんや……。」


そう、俺は本来なら簡単に気付く点を完全に見逃していた。


そして挙句の果てに相手の罠にまんまと引っ掛かり、
相手の意のままになっていたのだ。


今更になって、
やっとそのことに気付いた。

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