《MUMEI》 前半が終わり、 10分の休憩タイム。 倉木先輩が片手にボトルを持ち、 もう片方の手に持っているタオルで汗を拭きながら、 俺のいるベンチへ歩いて来た。 そして豪快に俺の隣りに座る。 「……解ったか?」 暫くの沈黙の後、 先輩が口を開いた。 「…はい。 俺、ホンっト馬鹿でした。 俺一人だけ何も出来なくて、 それがめっちゃ悔しくて……。」 「はいはい、ストーっプ!」 先輩は笑顔で俺の肩を叩いた。 「お前、今試合中何だぞ? 気付いただけで十分だ。 後は切り替えて行けばいい。」 「でも……。」 「いつもの賢史はどこいった? そんなネガティブオーラ全開じゃ、 さっきの二の舞になっちまうぞ!」 俺の頭をくしゃくしゃと掻き回した。 普段なら子供扱いされているようなその行為に腹を立てるのだが、 今回は違った。 何故だか妙に安心するのだ。 「先輩……。」 「ん?」 俺は隣りでドリンクを飲む先輩の方へ、 体ごと向けた。 「ありがとう。」 前へ |次へ |
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