《MUMEI》 「珍しく素直だな。」 先輩は口角を上げて、 笑った。 「ぜ、前言撤回! 人がせっかくお礼言いよるのに、 な、なんかえらい損した気分じゃないっすか!」 「俺は得した気分だな。 賢史の真っ赤になった顔を見れて。」 嫌味ったらしく、 俺にウインクする。 「せ、先輩!!」 「ぶっ! ハハハッ、賢史、今の顔凄かったぞ!」 先輩は本当におかしかったのか、 腹を抱えて笑い出す。 俺もつられて笑ってしまった。 「元気出たみたいだな。」 「え?!」 先輩は突然優しい眼差しを俺に向けた。 もしかして俺を励まそうとして……? 「よし、そろそろ後半戦が始まるな。 賢史、足はもう大丈夫か?」 「え? あ…はい!」 「よし、じゃあ先行ってるぞ。」 「はい。」 俺は先輩の後ろ姿を見つめながら思った。 俺もいつか必ず先輩のような、 でかい存在になってやる、と。 前へ |次へ |
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