《MUMEI》

「さあ、たんとお食べ。」

きいさんの飯は美味い。彼曰く、いい男を捕まえるのは胃袋かららしい。
モツ鍋は醤油ベースだ。


「じゃ、二郎の帰国を祝ってカンパーイ!」

鍋を中心にグラスを高々と掲げ、一気にビールを飲む。
アルコールが苦手な二郎は帰りの運転に備えて玄米茶だ。


「あったまる……。」

二郎が独り言を笑顔を浮かべながら漏らした、その横顔をチラ見して満足してたら、乙矢に観察されていたようで睨みつけてやる。


「忙しいな。」

乙矢に鼻で笑われた。お前のせいで百面相になったのだから理不尽な話だ。


「二郎君もっと食べなよ!」

きいさんはおたまで二郎の器に注いでくが、猫舌なせいか中の具をただただ見つめていた。
そんな二郎もかわゆい……


「煮物も美味い。」

南瓜の煮物を勧める。


「……う、うん、」

今、
視線を反らされた気がしたけど気のせいだよな?

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