《MUMEI》 寂しさと、悲しみと. 「…彼氏?」 すべてが終わって、ふたりでベッドの上でまどろんでいたとき、 不意に、青年が呟いた。 わたしは彼の顔をぼんやり見つめ、え?と尋ね返す。 彼は、乱れてほつれきったわたしの髪の毛を優しく撫でながら、言った。 「…ずっと、『ナオ』って、言ってた」 わたしは黙り込む。 心の中だけで呼んでいたはずのその名前を、わたしは自分でも気づかないうちに、口にしていたのだろう。 彼は尚によく似たその顔で、わたしに柔らかくほほ笑む。 「ケンカでもした?辛いことでもあるの?」 投げかけられた問い掛けに、わたしは答えなかった。 急に、目が覚めた気がした。 行きずりの男と、こんな風に夜をともにして。 相手の素性どころか、名前だって知らない間柄なのに…。 −−−尚に、似ているから、と。 ただ、それだけの理由で。 . 前へ |次へ |
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