《MUMEI》 . 不安な想いでいっぱいのわたしに彼は気づかず、優しくわたしの頬に触れた。 わたしはゆるりと瞬き、なんで…?とかすれた声で呟いた。彼はよく聞き取れなかったのか、なに?と甘い声で尋ね返す。 わたしは、まっすぐ彼の顔を見つめて、言った。 「なんで、そんなこと、聞くの?」 わたしの問い掛けに、彼は一瞬、黙り込んだ。 わたしの目を、しっかり見つめる。 それは、強い意思を宿した瞳だった。 少しの沈黙のあと、 彼は、寂しそうにほほ笑む。 「さっきからずっと、泣きそうな顔してるから…」 ………その台詞に、 わたしは、高ぶる感情を堪えきれず、 ボロボロと大粒の涙を、こぼした。 . 前へ |次へ |
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