《MUMEI》 . わたしは、乱れたシーツを引き寄せ、顔をおおい、声を殺して泣いた。 醜い嗚咽を繰り返しながら、 わたしは口を、開く。 「尚が、いなくなっちゃう…わたしから、離れて、どこかに行っちゃうの」 わたしの言葉に、彼は、うん…と頷いた。わたしはつづける。 「みんな、行っちゃった…わたしだけ、取り残されて、わたしには、尚しかいなかったのに、今度は尚まで…わたし、ひとりになっちゃうよ」 頼りない声で、自分の胸の内を打ち明けた。 −−−ただ、寂しかった。 友人たちは、みんな、愛するひとと一緒になって、『幸せ』になっていた。 わたしは、ずっと、ひとりなのに。 尚だけが、わたしの最後の砦だった。 その、尚すら、 わたしの知らないオンナと、 みんなと同じ、『幸せ』へと歩き出そうとしている…。 −−−今のわたしにとって、こんなに寂しいことはなかった。 . 前へ |次へ |
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