《MUMEI》 . 彼は、わたしが落ち着いて、眠りにつくまで、 わたしを抱きしめ、頭を撫でてくれていた。 混濁した意識の中で、 聞こえた、台詞……。 「…初めて見たとき、なんてきれいな女のひとだろうって、こんな風に抱きしめられたらって、そう思って声をかけたんだ…」 −−−それは、 夢だったのか。 それとも、 幻だったのか……。 彼の広い胸に、ぴったりと寄せていた、わたしの鼓膜に、 響いてきた、音。 ドクン…ドクン…と、 強く、烈しく 逞しく、脈打つ鼓動………。 その音の心地良さに、 肌から伝わる優しい温もりに、 …………わたしは瞼をゆっくり閉じる。 彼は長い指で、わたしの髪の毛を弄び、 最後に、こう呟いた、気がした。 「夢みたいだ…」 ****** 前へ |次へ |
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