《MUMEI》
人の少ない別館
「お、お前、ホントにここのお嬢様なのかよ?」

「うん」

「信じらんねぇ!嘘だろ!」

「嘘じゃないし」






いやいや、信じられるわけねぇだろ!?

お嬢様は、鉄棒振り回したりしませんから!こんなに口悪くありませんから!!

だってお嬢様ってのは、挨拶が「ご機嫌麗しゅう」ってやつのことだろ?「私、鉛筆より重いものは持てませんわ」ってやつのことだろ!?




目の前にいる少女は、悠一の想像する'お嬢様'とはかけ離れていた。







「おい、まだ信じないって顔してんな?」

「当たり前だろ?」

「はぁ。じゃあ、廉にでも聞けば?」

「……いや、いい」

「何で?」

「なんか面倒臭いし、南方さんが例えお前がお嬢様だって言っても、納得いかねぇから」

「あっそ」






面倒臭い・納得いかないとは、失礼な奴だ。でも、確かにそんなことは、この悠一という男には興味のないことなんだろう。

少女は、悠一を見上げながらなんとなくそう思っていた。
すると、悠一は何か思い付いたかのように、口を開いた。





「…あ」

「?」

「そういえば、この屋敷ってやけに人が少なくねぇか?」

「…ずいぶん唐突だな」

「別にいいだろ」

「んー、まぁ、ここにいるのは僕の他にメイドが2・3人だけだからねぇ。本館の方は廉
を含めた使用人とメイドが何人もいるけど」

「ふ〜ん。お嬢様って、もっと多くの奴が世話すんだと思ってた」

「お兄様達が、人を近づけないんだよ。最低限の人間だけでいいって」

「へー…。…ん?お兄様って、もしかして翔と輝か!?」

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