《MUMEI》
お前も笑えんだ?
「もしかしなくても、そうでしょー。何、当たり前のこと聞いてんの?」

「…ですよねー。偉そうで性格悪いとこなんかそっくりだしねー。どっちも父親には見え
ませんしねー」

「てっめ、馬鹿にしてんの?」

「まっさかー」





性格悪いのは、お前だろ!!
という言葉を、少女は無理矢理呑み込み、気になったことを口にしてみた。






「っつーかさ、お兄様達を呼び捨てって…勇気あるっていうか、礼儀知らずっていうか」

「はぁ!?ちょっと待て!!礼儀知らずは、お前の兄貴達だろうが!初っぱなから嫌味言わ
れたぞ!?」

「………」






少女は、不満を素直に話す悠一を見て、無意識のうちに微笑んだ。






「…へぇ、お前も笑えんだ?」

「え?」

「いや、俺は会って少ししか経ってないから普段のお前がまだ分かんねぇけど、少なくとも今は、怒鳴るか無表情かのどっちかだったからさ」

「そう…だったんだ。僕、笑ってなかったんだ」

「まぁ、俺に会ってからの話だけどな。……あ、そういえばさ、お前の…」




     コンコン




悠一の言葉は、ノック音によって遮られた。

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