《MUMEI》
再生のとき
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新宿のデパートのプロモーションスペースで、わたしはひとりの女性客と向かい合って、《ザ・ビート》の説明をしていた。


「スパイシーですっきりした印象もありながら、どこか女性らしいしなやかさを感じさせる香りです」


すてきですよね?と、わたしが満面の笑顔で客に尋ねると、彼女はほほ笑んで、そうですね、と答えた。


「斬新な感じがして、良いわね…こういうの、結構好きかも」


その台詞に、わたしは力強く頷く。


「他のひとと差をつけていただけますよ。オリジナリティのある香りですので。お客様の雰囲気にも、とても似合うと思います」


《ザ・ビート》のボトルを掲げて見せて、ぜひ、お手元でテストして見ませんか?と、続けざまに提案してみると、彼女は頷き、うれしそうに手首を差し出した。


その細い手首に、

わたしは香水を、ワンプッシュだけ吹きかける。


爽やかな柑橘の香りが、鼻孔をくすぐる。



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