《MUMEI》 再生のとき. 新宿のデパートのプロモーションスペースで、わたしはひとりの女性客と向かい合って、《ザ・ビート》の説明をしていた。 「スパイシーですっきりした印象もありながら、どこか女性らしいしなやかさを感じさせる香りです」 すてきですよね?と、わたしが満面の笑顔で客に尋ねると、彼女はほほ笑んで、そうですね、と答えた。 「斬新な感じがして、良いわね…こういうの、結構好きかも」 その台詞に、わたしは力強く頷く。 「他のひとと差をつけていただけますよ。オリジナリティのある香りですので。お客様の雰囲気にも、とても似合うと思います」 《ザ・ビート》のボトルを掲げて見せて、ぜひ、お手元でテストして見ませんか?と、続けざまに提案してみると、彼女は頷き、うれしそうに手首を差し出した。 その細い手首に、 わたしは香水を、ワンプッシュだけ吹きかける。 爽やかな柑橘の香りが、鼻孔をくすぐる。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |