《MUMEI》 . ………あの冬の日、 わたしは、見知らぬ男に抱かれて、 すべてをリセット出来た。 間違っているかもしれないけれど、 それでも、わたしは、 あの夜、そのひとに、救われた。 尚への歪んだ気持ちも、 あかねさんに対する醜い嫉妬も、 わたしを取り巻く、凍てついた孤独すらも、 きれいに、浄化された気がした。 ネイリストさんはニッコリして、ステキですね〜!とはしゃいで言い、それから再び爪にネイルを塗りはじめる。 「結婚する本人たちが一番忙しいでしょうけど、出席するほうも結構、準備が大変ですよねー?」 …ドレスでしょ?靴でしょ?バッグでしょ?美容院でしょ?…それに、ご祝儀。 そうやってまくし立てて、ネイリストさんは、はあ…とため息をついた。 「こんな感じで、どんどんお金が無くなっていくんですよねー」 ぶうたれた彼女を見て、わたしは笑う。 「ふたりの幸せを祝うためだから、しかたないですよ」 わたしの発言に、ネイリストさんは顔をあげ、余裕の発言ですね〜!と茶化した。それから首を傾げて、あ、まさか!!と素っ頓狂な声をあげる 「ステキなひとに、巡り会いました?」 彼女のからかうような言葉に、 わたしは、ふっと笑い、 自分の爪先を見つめた。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |