《MUMEI》 絆創膏あんな嘘が通じるとは思っていなかったが、まぁ信じてくれたならそれでいいだろう。 「あ、そうだ。忘れてたんだけど、これがここでの服装ね」 廉は、持ってきていた紙袋からYシャツ・ズボン・ネクタイを取り出す。 それを見て、'少女が言ってたのはこの服のことか'と納得する。 「明日からは、これを着てね。それじゃ、今日は挨拶が終わったことだし、そろそろ戻ろ うか。仕事は明日からね」 「はい。よろしくお願いします」 挨拶だけで、ずいぶん疲れるものだ。これは、明日からの仕事も大変だと覚悟しなければいけなさそうだな。 「それでは、今日はこれで失礼しますね。白霧も本館での仕事となりますので」 「分かりました。……悠一、お待ちなさい」 「……はい?」 廉と部屋を出ようと扉を開けたところで、悠一はお嬢様に呼び止められた。 振り向くと、彼女は静かに近づいてきて「明日から、頑張って下さい」と言って手を差し出してきた。 悠一は、戸惑いながらも、差し出された手を握り「はい、有り難うございます」と返す。 「 」 「え…?」 「じゃ、行こうか。悠一君」 「あ、はい」 「「失礼しました」」 部屋を出た悠一は、廉の後ろを歩きながら自分の手にあるものを見つめた。 ――絆創膏 さっき握手した時に、少女から握らされたものだ。そして、彼女は手を離すと同時に呟いた。 『さっきは悪かったな。怪我、お大事に』 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |