《MUMEI》
愛人
……こ、これは!
段ボールの底に、懐かしいものが隠れてた。


「そうやって、すぐサボるから進まないんだね。」

小言が増えると二郎の手際が上がってゆくようだ。
袖から覗くたおやかな手首の動きを目で追いながら、気配を消して後ろに回る。


「ちょっと、掃除!」

通した袖の中で大暴れされた。


「暴れるなって、すぐ終わるから。」

脱がすのより、着せる方が難しい。


「……箪笥臭い」

結局、大人しく着せ替えさせてくれる。


「うん、ぴったり。」

学ランも十年前のまま、変わり無く着こなしている。
むしろ、今の方がエロい……。


「……満足?」


「待って、下も履いて。乙矢に自慢するから!」

携帯を構えたら、学ランを顔面に向かって脱ぎ捨てられた。

勿体ない、一日中抱きしめてたって良かったのに。

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