《MUMEI》 海岸沿いで. 彼女の別荘を出てから、朝もやが漂う海岸沿いの道を、ひとりで歩く。 まだ、朝日も昇らない、夏の日。 人影どころか、車の姿すら、ない。 ひっそりと静まり返る、この通りの下には、ディープグリーンの海が果てしなく広がっている。 寄せては返し、寄せては返し…。 何度も繰り返される、その永遠の運動。 ひそやかに囁くような波の音に、じっと耳を澄ませる。 誰もいない海を眺めながら、俺はひたすら歩いた。 この海の果てにある、どこかの楽園を思い浮かべながら…。 ****** 矢代 武、19歳。 この春、大学生になったばかりだ。 家族はサラリーマンの父親と パート勤めの母親と、 それから、 家を出て東京で働く姉がひとり。 ありふれた、ごくフツーの家庭。 そんな家に生まれた俺も、 ごくフツーの、子供のはずだった。 ……………なのに、 2年まえから、素性の知れない金持ちオンナに『飼われて』いる。 ****** 前へ |次へ |
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