《MUMEI》 . 出会いは、単純だった。 当時、まだ高校生だった俺は、 バイト先の先輩達とクラブになだれ込んだとき、 その『オンナ』と出会った。 彼女は、ダンスホールの端っこで、 華奢なスツールに浅く腰掛け、 今日みたいにけだるくタバコを吸っていた。 ホルターネックの黒いロングドレスが、彼女のグラマラスな身体のラインを忠実になぞり、 その白いうなじにかかる、色素の薄い長い髪を、毛先まで丹念にブローした彼女は、 今まで俺が知っていた『オンナ』とは、全く別の生き物に見えた。 俺は、彼女から目が離せなかった。 魅力的なそのオンナが、俺の視線に気づいたのか、 ゆっくりと、視線を巡らせ、 離れた場所でぼんやりと立ちすくむ俺の顔を見、 ヌーディベージュのグロスで輝く唇を、 三日月の形に、歪めて見せたのだ。 俺は、その壮絶な美しさを秘める彼女を、 ただ見つめ返すのが、やっとだった。 −−−たぶん、あのときから、 俺は、彼女の… 富岡 昌美というひとりのオンナの、 欲望という名の『毒牙』にかかってしまったのだろう。 ****** 前へ |次へ |
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