《MUMEI》
《ラグーン》で待ち合わせ
.




海岸沿いの通りから、程近い場所に、


その店はあった。


潮風にやられ、ボロボロの佇まいのその小さな建物には、手作り感たっぷりの、《ラグーン》とペンキで書かれた木製の看板がかかっていた。

開店まえなので、ひとの気配はなく、ひっそりとしている。

古びたその店のまえで、俺はぼんやりと立ち尽くしていた。





《ラグーン》は、俺が高校生だった頃、バイトしていたサーフショップだ。





海の傍で生まれ育った俺は、小さい頃から波に慣れ親しんで、物心ついたときには、自分の身長より大きなボードを引きずって、毎日のように、海で遊んでいた。


そして、いつの頃からか、この店の存在を知り、高校に進学すると当たり前のように、バイトを申し込んだ。

卒業までの3年間、俺はこの店で働き、

ヒマさえあれば、バカのひとつ覚えみたいに波に乗っていた。


大学に入るとじきにバイトは辞めたが、


今でも、この店とは関わり合いがある。





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