《MUMEI》 . 「まだ水も冷たいし、今日は波が高いからはしゃぐなよ」 制服姿の俺にヒロトさんはそう釘を刺しながらも、スクール生徒用のウェットスーツとボードを、快く貸してくれた。 俺は早速スーツに着替えて、《ラグーン》を飛び出し、海へ向かった。 海の中にはすでに、顔なじみのサーファー達がごろごろいて、俺は彼らと一緒に波と戯れた。 ヒロトさんが言った通り、海の水は冷たかったが、それも気にならないくらい、夢中だった。波と一体になるのが、楽しかった。 ひとしきり遊んで、一旦休憩しようと仲間と一緒に陸に上がったとき、 遠くに、拓哉の姿を見つけた。 拓哉は、海岸沿いの歩道の防波堤にもたれるようにして、ぼんやり海を眺めていた。 どうやら、まだ海の中にいるサーファー達を見つめているようだった。 時折吹く、強い潮風に髪の毛をなぶられながらも、彼はただそこでじっとしていた。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |