《MUMEI》

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「まだ水も冷たいし、今日は波が高いからはしゃぐなよ」


制服姿の俺にヒロトさんはそう釘を刺しながらも、スクール生徒用のウェットスーツとボードを、快く貸してくれた。


俺は早速スーツに着替えて、《ラグーン》を飛び出し、海へ向かった。

海の中にはすでに、顔なじみのサーファー達がごろごろいて、俺は彼らと一緒に波と戯れた。


ヒロトさんが言った通り、海の水は冷たかったが、それも気にならないくらい、夢中だった。波と一体になるのが、楽しかった。


ひとしきり遊んで、一旦休憩しようと仲間と一緒に陸に上がったとき、


遠くに、拓哉の姿を見つけた。


拓哉は、海岸沿いの歩道の防波堤にもたれるようにして、ぼんやり海を眺めていた。

どうやら、まだ海の中にいるサーファー達を見つめているようだった。

時折吹く、強い潮風に髪の毛をなぶられながらも、彼はただそこでじっとしていた。


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