《MUMEI》 とんでもない提案. 俺が、浜で拓哉を見上げていると、 ちょうど、ヒロトさんが店の外に出てきた。 ヒロトさんは俺が拓哉を見つめていることに気づいて、知り合い?と尋ねてきた。 俺は少し迷ったが、素直に頷いて、拓哉が転校生で、俺と同じクラスなのだと簡単に説明した。 話を聞いたヒロトさんは、ふぅん…と一声唸ると、 なにを思ったか、突然、拓哉に向かって叫んだ。 「おーい!転校生!!」 ヒロトさんの呼びかけに、拓哉はハッとしてこちらを見た。 それと同時に、俺と目が合う。 彼は一度、驚いたように目を見開き、それからバツの悪そうな顔をした。俺も少し気まずくなる。 しかしヒロトさんは気づかないのか、さらに続けた。 「そんなところで見てないで、こっち来いよ!!」 ヒロトさんの声を聞きながら、俺は、呼びかけたって無駄なのに…と心の中で呟いた。 拓哉は俺を嫌ってる。いつだって彼はひとりで時間を過ごし、遊び回る俺やクラスの仲間を冷めた目で見ていたから。 −−−しかし。 拓哉は戸惑いながらも、ゆっくりと俺達のところへやって来た。 . 前へ |次へ |
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