《MUMEI》

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ヒロトさんはニッコリ微笑み、さりげなく逃げようとした俺の肩にしっかり腕を回してそこから動けないようにし、拓哉を見つめた。


「サーフィン、好きなの?経験者?」


ヒロトさんの穏やかな声に、拓哉は困ったように首を傾げた。


「…やったことない」


小さく答えた拓哉に、ヒロトさんは笑う。


「じゃ、やってみる?必要なものは貸すし」


それから俺の顔を見て、とんでもないことを言い出した。


「武、お前教えてやれよ。どうせヒマだろ?」


当然のようにあっさりと提案したヒロトさんに、俺は本気で驚いた。

ヒロトさんの腕の中でもがきながら、なんで俺が!と反論すると、ヒロトさんは首を傾げた。


「俺は仕事残ってるしさ。お前のクラスメイトだろ?仲良くしろよ」


そう言われたが、それでも俺が、絶対嫌だ!!と、ジタバタ抵抗すると、

ヒロトさんは俺の耳元で、囁いた。



「…姉ちゃんに言い付けるぞ。俺の言うこときかねーって」



その言葉に、俺はぴたりと動きを止めた。


俺の姉は6コ上の社会人で、

弟の俺のことを、虫けらみたいに扱うような悪魔で、



しかも、



当時、ヒロトさんと付き合っていた…。



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