《MUMEI》
S疑惑
食堂へ向かうエレベーターの中


ホッとした俺に対して、虎之介先輩は


微妙に距離を取っていた


「…虎之介先輩?」


どうしたんだ?


虎之介先輩は、真剣な表情で、言った


「誠…お前、Sだったんだな…」





「へ!?」


な、何だよ急に!?


「お、俺、Sじゃねーよ!」


何その誤解!


「…だってさっきのお前のセリフ…」

「それは」

「どんな理由でも、自分より弱い女の子に対して、ああいうのは…」





わ、


忘れたー!!


俺、今男じゃん!


確かに男が女にその態度はひでーじゃん!


さっきのは男に対してだって言ったら


…俺、ホモかバイになっちまう!


それはそれで嫌だ!


「…別に責めてるわけじゃないぞ。それに誠のは、異性限定だろ?

俺やさっきの二人には普通だったし」


いや、それは恋愛対象になってないからで…


「俺が心配してるのはな、誠」


エレベーターが止まり、虎之介先輩は、無言の俺の肩を叩き、続けた


「Sなお前が、松嶋に気に入られたって事だ」

「な…」


何だそれー!!

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