《MUMEI》 . 姉からの報復を想像し、すっかり怯えた俺は、黙ってヒロトさんの提案に頷いた。 急に素直になった俺を見て、ヒロトさんは満足そうに微笑んで、尋ねた。 「…嫌いなの?」 拓哉を、ということだろう。俺は頷き、あまり話したこともないと告げると、ヒロトさんは、そりゃダメだな…と呟いて、 「まともに話したこともないヤツのこと、一方的に嫌うのって損してると思うな。もしかしたら、すげー気が合うかもしれないのにさ」 と、やんわり言った。 ヒロトさんはウェットスーツとサーフボードを持って来ると、仕事があるから、と言い、さっさとひとりで店に戻っていった。 残された俺と拓哉の間には、 なんとも言えない、気まずい空気が流れていた…。 サーフィンを教えるって言ったって、 なにから教えていいのか、分からなかった。 重苦しい沈黙を先に破ったのは 意外にも、拓哉からだった。 「…いつもここで、サーフィンしてんの?」 突然の質問に、俺はビックリしながらも、頷いた。すかさず拓哉は、始めて何年くらい?と切り返した。 その早さに、またまたビックリしつつ、ドギマギしながら答えた。 「いつからだったかな…よく、覚えてない」 「なんだよ、それ。テキトーだな」 「ガキの頃から、『遊び』っていったらサーフィンしかなかったし」 . 前へ |次へ |
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