《MUMEI》 . 驚きはしなかった。 昌美は40歳とはいえ、見た目も若く、オンナとしてとても魅力的だし、結婚していてもおかしくはない。 俺だって、自分の母親と大して年齢の変わらないオンナと、こうやって寝ることになったって、それが恋愛だとも思わなかった。 昌美は俺の髪を撫で、また囁く。 「わたしが、この街に遊びに来たときだけでいいの。こうして、一緒に気持ちいいことをしてくれたら、それで…」 そう言って、彼女は高そうなブランドバッグの中から財布を取り出し、金を抜き取り、俺に差し出した。3万円はあった。 「君はわたしを抱いて、わたしは君にお金をあげる…立派な《ビジネス》でしょう?」 唄うような昌美の声を聞きながら、目の前にちらついた大金に、俺は目を奪われていた。 濃厚なバラの香りに、眩暈がする…。 昌美は聖母のように優しく微笑み、さらに、言った。 「この《ビジネス》に同意するなら、このお金を受け取って、もう一度、抱いて」 俺は瞬いた。 別に、金に困っていたわけではないし、昌美のことを本気で好きだったわけでもない。 それでも、俺がその金を受け取り、彼女のしなやかな腕を引き寄せたのは、 愚かしい欲望に、負けたからだ……。 . 前へ |次へ |
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