《MUMEI》

「……光、帰ろうか。」

国雄の声でふわふわした意識の中に僅かな理性がを取り戻す。
仕事に対して自身の心の在り方、基礎は監督が教えてくれた。
煙草の吸い方も……。


監督が与えてくれたものはたくさんある。


棺に入ってるのは、本当は偽物で本人はまだどこかに身を潜めているのかと疑っていた。


「危ないな、」

歩みを止めていたようで、後ろの人がぶつかる前に国雄が俺を避けてくれた。
俺の肩を掴む国雄の体温に、安心してしまう。


「降り出してきた……」

雨雲が早く流れている、空が泣いてるみたいだ……。





「……………わっ!」

突然、国雄が叫んで俺の肩を揺さ振った。
周りにも気付かれるくらいの大声だ。

「雨だ、走れ!」

国雄が手を引いてくれた。
ここに国雄が居てくれて、救われた。

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