《MUMEI》

「あら、おはよう、ティーン、ポポ」


寮の食堂で、一人台所に立つ少女が居た
二人よりも長い黒髪で、一見してとても活発そうな少女

「おはよ、リィズちゃん」


その少女リィズは、愛用のエプロンを身につけ、せっせとお弁当を作っていた


「なーんか、いい匂いがすると思ったら、リィズちゃんのお弁当だったんだぁ!」

ポポが目を輝かせる

リィズは修道女見習いの中でも取り分け料理が上手かった

加えて、剣術事やサバイバルなど、修道女に似合わないアウトドア派で
司祭を始め、各女史からちょっとした問題児として見られていた

しかし彼女自身、戦災孤児として過去のショックからか修道院に来るまでの記憶がなく
その活発な性格は、彼女の事を思えばプラスなのかもしれないと、余り叱られないのも事実である


「今日はいい天気でしょ?せっかくだし、隣の母大樹の傍で稽古しようと思ってさ」

「じゃあ私達も行こうよ!ティーンちゃん、ちょうど花の咲く時期だし、みんなでピクニックにしよー!」

「そうだね、木陰でのんびり本を読むのもいいかもね」


リィズは、はぁ…とため息をつく
「相変わらず本の虫ね、たまには日に当たらないと背、伸びないわよ?」

「ちょっと、ボクは植物みたいに言わないでよぉ〜」


ははは、と笑い声が響く
三人は改めて全員分のお弁当を作り

修道院の周りに広がる森の中
「母大樹」と呼ばれる大樹目指して出発した

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