《MUMEI》 . 俺は、この時間だと家族がいるだろうから、と遠慮したのだが、彼は首を振った。 「母さん、仕事で遅くなるって言ってたから」 「でも、親父さんとか帰って来たら悪いしさ〜」 俺がそう言うと、拓哉は少し、寂しそうな顔をして黙り込んだ。 少し間を置いて、 淡く笑う。 「親父、いないよ。離婚したもん」 言ってなかったっけ?と、軽い調子で続けた。あえて、そういう風に言っているようにも聞こえた。 俺は、ビックリして言葉を無くした。 拓哉の両親が離婚していたなんて、今まで聞いたことがなかった。 戸惑った俺は、悪い…と呟くと、拓哉は笑い飛ばした。 そうして、 その経緯を話しはじめた。 「小さい頃から、俺の親、仲悪くてさー。いっつもケンカしてんの…で、この前、離婚して、そんで母さんは俺を引き取って、東京から出て、この地元に帰って来たんだよ。ばーちゃんの家が、あったからさ、とりあえず…って感じで」 軽い言葉に聞こえるような声だった。 俺は黙り込んだ。返す言葉が見つからなかった。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |