《MUMEI》
再会
      =翌日=

「お嬢様、お早うございます」

「えぇ、お早う」






いつものようにメイドと挨拶を交わし、いつものように朝食をとる。そして、いつものように部屋で一人本を読み、習い事へと向かう。

毎日毎日、同じことの繰り返しだ。あの青年とも、もう会うことはないだろう。

お兄様達が、本館の者を僕に会わせたことなんて一度もない。

そんな憂鬱な気分で読書をしていると、"コツン"という音が聞こえた。

何か落としたのかと思い、辺りを見渡すが、特に何もない。




『何だ、気のせいか』




そう思った矢先、再び聞こえる"コツン"という音。'やはり気のせいではなかったのか'ともう一度、注意深く辺りを見渡すと、音の原因を発見。

誰かが、小石を窓にぶつけているようだ。





『…いたずら?』





文句を言ってやろうと窓を開けてベランダに出る。そして、身を乗り出して叫んだ。






「こらっ!誰だよ、僕の部屋の窓に…わっ!?」

「あ……」






石が危うく顔面に直撃するところだったのを、ギリギリで避ける。


…あったまきた。







「わ、悪い…」

「あっぶないなぁー!!何すんだよ!怪我したらどうすんの!」





もう一度身を乗り出して下を見れば、そこにはもう二度と会うことはないだろうと思っていた青年…白霧 悠一がひきつった笑顔を浮かべて立っていた。

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