《MUMEI》

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拓哉は沈黙が怖かったのか、そのまま続けた。


「最初、こんな所嫌だって思ってた。海と山しかないし、近所じゃ遊べるトコなんかないし、電車は今どき単線で、しかもオモチャかよ!っていうくらい、ちゃっちいしさ。親の都合で、なんで俺が犠牲にならなきゃならないんだって、いつも思ってた」


俺は、確かに…と、心の中で頷いた。

東京がどんな所かよく知らないけれど、拓哉のような人間から見たら、この街はかなり田舎に映るのだろう。


拓哉は深いため息をついて、でもさ…と呟いた。


「今は、ここに引っ越してきて、よかったと思ってる。ヒロトさんや、たくさんのサーファー仲間や、武と出会えたし…それは東京じゃ叶わなかった」


転校してきたばかりの頃、拓哉はずっとひとりぼっちだった。周りの人間と関わらないよう、あえてそうしていたようにも思う。

もちろん、この街を…ここで暮らす人々を馬鹿にしていた気持ちもあったのだろうが、

大半はきっと、身勝手な両親に対する、拓哉なりの反抗だったのだ。


拓哉は俺の顔を見て、笑った。


「俺には兄弟はいないし、今、一緒に住んでるのは母さんだけだから、遠慮すんなよ」


その言葉を聞いた俺は、

断ることはせず、

拓哉の後を追うように、夕暮れの坂道を歩いた。

二つの、長い影がゆらゆらと、揺らめいていた。





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