《MUMEI》

「仕事、行ってくる」
一人にしてしまう事がこんなにも不安になる
外の世界全てが今は恐くて
家の中ですら安らげない
そんな場所に彼女を一人残していかなければいけないという事は
唯々、広瀬の不安を煽るばかりだった
「愁ちゃん」
出掛けの途中、呼びとめられ
脚を止め、振りかえる事をすれば頬に掠める様なキスを一つ
「気を付けて行ってきてね。待ってる、から」
野衣の声を背で聞きながら、広瀬は仕事へと家を後にしたのだった……

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