《MUMEI》 初めての気持ち. ……なんだ? 今まで感じたことのない感覚に、ひとりで戸惑い、そこから動けずにいると、 「あれ?」 間の抜けた声が、背後から聞こえてきた。 彼女と同時にそちらへ目をやると、 コンビニの袋を下げた拓哉が、そこにいた。 拓哉は俺を見て、少し驚いたような顔をした。 「随分早いじゃん。もう、来たの?」 ぞんざいな拓哉の言い草に俺は、お前が誘ったんだろ?と、眉をひそめる。俺の不服そうな声に拓哉は笑い、言った。 「そんなに、俺に会いたかったのかよ?」 「んなわけあるか。気色悪い」 「冗談だって」 いつものように、軽口を叩き、笑い合う俺達のその傍らで、 彼女は黙ってニコニコしていた。 そのとき、初めて彼女の存在に気づいたとでもいうように、 拓哉は、母さん、と驚いた声で彼女を呼んだ。 「何してんの、こんなトコで」 その尋ね方に、彼女は息子を軽く睨む。 「『何してんの』、じゃないわよ。お友達、ほったらかして出掛けちゃうなんて」 拓哉は母親の小言をうるさく感じたのだろう、ハイハイ、と彼女を適当にあしらった。 . 前へ |次へ |
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