《MUMEI》

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それから俺の顔を見て、気まずそうに彼女を指差す。


「…これ、俺の母親。今日、たまたま仕事休みでさ」


素っ気ない拓哉の紹介の後、

彼女は満面の笑顔を浮かべて、俺を見つめる。


「はじめまして。拓哉がお世話になってます」


そう言って、彼女は深々と頭を下げる。
つられて俺も軽く会釈した。

拓哉は照れ臭かったのか、そんな母親に眉をひそめた。


「余計なことはいいから、さっさと行けよ。土いじり終わったのかよ?」


つれない息子の態度に、彼女は子供っぽく頬を膨らませる。


「ガーデニング!土いじりって言わないでって言ってるでしょ!」


「やってることは同じだろ?」


「イヤー!なんか、聞こえが悪いじゃない!」


「大して変わらねーって」


しばらくそうやって、ギャアギャアと言い合っていたのだが、拓哉が先に、どーでもいいよ、と投げやった。

再び俺を見て、部屋行こうぜ、と声をかける。
俺は頷き、拓哉の母親へ会釈すると、

彼女はニッコリして、言った。


「ゆっくりしていってね」


その軽やかな抑揚が、

俺の鼓膜に、響き渡って、

妙に、胸がざわめいた……。





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