《MUMEI》 拓哉の部屋. 2階にある自分の部屋に入ると、拓哉は持っていたコンビニの袋を部屋の中央にあるローテーブルの上に乱雑に置くと、早速、壁に立てかけてあったサーフボードを抱えた。 彼は意気揚々と話かけてくる。 「コレなんだけどさ、どうかな?」 俺は一度ボードを眺める。 鮮やかなイエローのラインが入った、真新しいそのボードは、艶やかな光沢を放っていた。 拓哉は大切そうに表面を撫でながら、言う。 「俺的にはちょっと、厚いかなと思うんだけど」 「あー」 「シェイパーかけた方がいい?」 「あー」 「ワックスで良いやつ、知ってる?」 「あー」 全ての問い掛けに、気の抜けた相槌を返す俺に、いよいよ拓哉は、聞いてんの?と、眉をひそめた。 拓哉には悪いが、はっきり言って、それどころじゃなかった。 気になってしかたないことがあり、それ以外のことを考える余裕がなかった。 . 前へ |次へ |
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