《MUMEI》 . 拓哉はため息をついて、ボードを静かに置き、コンビニの袋から、コーラのペットボトルを2本取り出し、その片方を俺に渡した。 「何なの?上の空じゃん」 不服そうな拓哉に、俺は受け取ったコーラを一口飲み、 それからようやく口を開いた。 「『土いじり』って、何?」 唐突な質問に、拓哉は理解出来なかったのか、顔をしかめて、はぁ?と声をあげた。 俺はペットボトルをテーブルに置いて、ため息をつく。 「お前の母さんに、さっき、言ってたじゃん。土いじりだの、ガーデニングだのって」 それを聞いて、拓哉はようやく納得したような顔をした。 肩を竦めて答えてくれる。 「母さんの趣味…つーか、仕事の延長なのかな」 俺は眉をひそめ、仕事?と繰り返す。 「仕事って、何してんの?」 拓哉はコーラを飲み、花屋、と簡単に答えた。 「街の方の花屋で、働いてる。将来は、ガードナーになりたいんだって」 『ガードナー』? 聞き慣れない言葉だった。俺が難しい顔をしていると、拓哉は軽やかに笑った。 「要するに、造園家だよ」 庭を作るひと、とさらに解りやすく言葉を付け足す。 . 前へ |次へ |
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