《MUMEI》 . 「名前なんて聞いて、どうすんだよ?」 どうしても気になったのだろう。拓哉は最後にそう尋ねてきた。 俺は、別に…と曖昧に答えて、 それでもなお、彼女の姿を見つめていた。 拓哉と、彼のボードとサーフィンの話を散々した後、俺は家に帰ると彼に告げた。 家の門まで拓哉が俺を見送ったとき、 彼は、母さんのことだけど…と言った。 「お前、まさか、《ビジネス》のこと考えてんじゃないだろうな?」 真意をはかるような尋ね方だった。 たぶん、昌美とのことがあるからだろう。 拓哉は俺が、自分の母親をターゲットにしているのでは、と疑っているのだ。 彼の神妙な顔つきを見て、 俺は吹き出した。 「まさか、バカなこと言うなよ」 笑い飛ばした俺を見て、拓哉は納得しないような顔をしたものの、だったらいいけど…と言葉を濁した。 その場で二言三言、簡単な会話を交わした後、俺達は別れた。 彼女−−−響子は、まだ雑草取りに夢中になっているのか、俺が帰ることに気づかなかったようで、姿は見せなかった………。 ****** 前へ |次へ |
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