《MUMEI》

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「名前なんて聞いて、どうすんだよ?」


どうしても気になったのだろう。拓哉は最後にそう尋ねてきた。

俺は、別に…と曖昧に答えて、

それでもなお、彼女の姿を見つめていた。


拓哉と、彼のボードとサーフィンの話を散々した後、俺は家に帰ると彼に告げた。


家の門まで拓哉が俺を見送ったとき、


彼は、母さんのことだけど…と言った。


「お前、まさか、《ビジネス》のこと考えてんじゃないだろうな?」


真意をはかるような尋ね方だった。

たぶん、昌美とのことがあるからだろう。

拓哉は俺が、自分の母親をターゲットにしているのでは、と疑っているのだ。

彼の神妙な顔つきを見て、

俺は吹き出した。


「まさか、バカなこと言うなよ」


笑い飛ばした俺を見て、拓哉は納得しないような顔をしたものの、だったらいいけど…と言葉を濁した。

その場で二言三言、簡単な会話を交わした後、俺達は別れた。


彼女−−−響子は、まだ雑草取りに夢中になっているのか、俺が帰ることに気づかなかったようで、姿は見せなかった………。





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