《MUMEI》 飲み会の幹事. −−−それから、何日か経って。 大学の講義を終えた後、 講義室で荷物をまとめている俺に、 「矢代君!」 寺嶋 若菜が、また声をかけてきた。 俺が顔をあげると、彼女は前と同じように、ニコニコしてそこにいた。 「わたしの名前、覚えてくれた?」 いきなりそう尋ねられて、俺は戸惑いながらも頷く。 「寺嶋 若菜さん、でしょ?」 俺の返事に、若菜は、正解でーす、とおどけて見せた 「よかった〜!!また『ごめん』とか言われたら、どうしようかと思ったー!」 笑顔で語る彼女に、俺もつられて笑う。 「あんな風に名乗られて覚えてなかったら、大ヒンシュクじゃん」 若菜は頷き、だよねぇ!と、また笑った。 それから、話を切り出す。 「今度の金曜日にね、セミナーのみんなと飲もうって言ってるの。ちょっとした親睦会のつもりなんだけど、よかったら、矢代君も参加してくれないかなーって」 朗らかな声で誘う若菜の顔を見て、俺は自分のスケジュールを思い起こす。 金曜日は、特に予定はない。 拓哉からの誘いもないし、昌美もこっちには来ていないらしく、久しく連絡がない。 それに、この前若菜の誘いを断って、また今回も断ったら、さすがに彼女も気分が良くないだろう。 . 前へ |次へ |
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