《MUMEI》 . 俺がアイスコーヒーを一口飲んで、俺?と尋ね返すと、若菜はこくんと頷いた。 「矢代君て細身な感じだけど、身体つきしっかりしてるでしょ?引き締まってるっていうか」 そう口にした若菜に、俺はああ…と曖昧に頷き、答えた。 「ずっと、サーフィンやってたから」 すると若菜は、サーフィン!?と、素っ頓狂な声をあげて、顔を輝かせた。 「すご〜い!!カッコイイねぇ!!」 これでもか!という程、褒めちぎる若菜の勢いにたじろぎ、俺は、たいしたことないよ…と謙遜する。 しかし、若菜は激しく首を横に振って、すごいよ!!と意気込んだ。 「だって、波に乗るんだよ?水の上を滑走するんだよ?ちょっとやそっとじゃ出来ないもん!」 ひとりでまくし立ててから、うっとりとした表情を浮かべる。 「いいなぁ…サーフィン、生で見てみたいなぁ」 若菜の甘えた言葉に、俺は、でも…と半ば投げやりに返す。 「俺、しばらくやってないし。てか、もうサーフィンやらないし」 そう言うと、若菜はビックリしたようで、え!?、と声をあげて身を乗り出した。 「どうして!?」 「どうしてって…」 彼女の勢いに戸惑いながら、俺は曖昧に答える。 「な、なんとなく…もう潮時かなって…」 曖昧に言葉を濁したのは、 ヒロトさんの話を、したくなかったからだった。 . 前へ |次へ |
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