《MUMEI》 あいたくてぐったりと二郎はグシャグシャなベッドの上で横たえていた。 気絶に近いようで屍のように静かに眠ってる。 ――――ルルルルルル 長めの電話が鳴っていた。 きっと、この時間帯なら二郎宛てだ。 「はい。」 つい、出てしまった。 「あれ?此処は木下さんの家じゃなかったのでしょうか。」 礼儀正しそうな男の声だ。 「二郎の同居人ですけど。」 刺々しい言い方になってしまう。 「はあ?聞いてないよ!本人に代わって、」 なんだ。二郎、俺のこと教えてなかったのかよ? 二股ってやつか? 「二郎なら俺にグチャグチャにされて疲れて寝てるから無理です。」 「どういうこと?」 間の抜けた声を出す。 「だーかーら、二郎なら俺に虐められて……」 「Hello、 早く会いたいよジロー。いつ暮らせるの?」 流暢な挨拶と共に相手の男と違う声が聞こえた。 子供の声だ。 「お前、なに?」 「ジローの家族に決まっているだろ。あんたこそ失礼だね。早くジローの声聞かせてよ。」 混乱だ……! 「……貸して。」 混乱の元凶に子機を手渡した。 前へ |次へ |
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