《MUMEI》 電話. 家に帰って適当に夕食を済ませた後、 自分の部屋に戻ったとき、 携帯が鳴った。昌美からだった。 数回のコールの後で、 俺は、その電話に出る。 「もしもし…」 掠れた声で呼びかけると、 『久しぶりね…って程でもないか』 クスクスと笑う、艶やかな昌美の声が聞こえてきた。彼女の声を聞く度に、身体中が熱く疼き出すのを感じる…。 俺が黙ったままでいると、 昌美が話を切り出した。 『週末、そっちの別荘へ行くわ。夫は出張なんですって』 だからヒマつぶしに、とでも言わんばかりの口調だった。 昌美は続ける。 『金曜日の夜、別荘に来て。あなたも泊まるといいわ』 たおやかな抑揚を耳にしながら、俺は、答えた。 「金曜は約束があるんだよ。大学の仲間と飲み会で」 あら、そうなの?と、昌美は簡単な様子で相槌を打ち、そして事もなげに切り返す。 『でも、朝まで飲んでるわけじゃないのでしょう?』 「そりゃそうだけど…」 『わたしは何時でも構わないわよ』 引き下がる様子のない昌美に、少し呆れ、ため息をついた。 「…俺、疲れて出来ないかもよ?」 そう言ってみたら、昌美は楽しげに笑い出す。 . 前へ |次へ |
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