《MUMEI》 . 『若い男の子が、なに言ってるの?今まで一度もそんなこと、なかったくせに』 昌美の笑い声が、耳に響く。 『それに、少しお酒が入った方が、君はずっと激しいしね…金曜日、楽しみにしてるわ』 それじゃ…、と半ば押し切られるような形で、電話を一方的に切られてしまった。 ……こっちの都合は、お構いナシかよ。 黙り込んだ携帯を見つめて、毒づいた。 いつもそうなのだ。 昌美はいつも自由奔放に、自分の都合で俺を振り回す。俺が言いなりになるのが当たり前であると、言わんばかりに。 ギャラを貰ってる以上、それが当然なのかも知れないが、 ふと、思う。 昌美は、俺を、ひとりの男として扱ってくれない。きっと、これから先もずっと。 それなのに、 俺に、男の役割を求めてくる…。 そのジレンマに悩みながら、 俺は眠りについた。 ****** −−−次の日の、大学の帰りに。 拓哉に会いに、アポ無しでバイト先の《ラグーン》へ向かった。 例の、若菜との約束を取り付けるためだ。 電話で簡単に済む内容だったけど、 ついでに、かつてのバイト仲間にも会いたかったから。 . 前へ |次へ |
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