《MUMEI》

「あの女が、武器はばらしてあるって言ってたけど……」
ユウゴがバッグを開けるのを眺めながら、ユキナが言う。
「ああ、確かにバラバラだな」
ユウゴはバッグの中を探りながら応えた。

 黒い様々な大きさ、形の武器が見事にバラされて詰め込まれている。
これでは、どれがどの武器の部品なのか、さっぱりわからない。

「これを、あの女は組み立てられるのか?」
そのうちの一つを取り出してみる。

小さな円形の部品。

 よく見ると、アルファベットと番号が小さく書かれている。
これで、種類を確認するのだろうか。

同じアルファベットの部品がないか調べようと、手をバッグに突っ込んだ時、ユウゴは妙な気配を感じた。

何か、聞こえる。

「ね、ねえ、どうしたの?」
突然、真剣な表情で辺りを窺うユウゴを、ユキナは不安そうに見つめている。
「しっ!」
ユウゴは人差し指を口にあて、耳を澄ませた。

ブロロロ……という音が聞こえてくる。

これは、エンジン音だ。

車?……いや、トラックか。

 たしか、プロジェクトの参加者は乗り物に乗ってはいけないはずだ。
乗ってしまうと、警備隊に排除されると言っていた。
つまり、乗り物に乗れるのは、警備隊のみ。
「やべぇ。逃げるぞ!」
「え?なに?」
よくわかっていないユキナに説明もせず、ユウゴはバッグを乱暴に持ち上げて走り出した。
左腕が使えないので、ひどく走りにくい。
「ねえ、ユウゴ?」
「いいから、来い!警備隊が来る」
「警備隊?なんで、ここに」
息を切らせながら、ユキナは振り向いた。
つられて、ユウゴも後ろを見る。

 軍用の独特なトラックが倉庫街へ猛スピードで入って行った。
運よく二人には気付いていないようだ。
「早く!」
ユウゴが小声で怒鳴ると、再び前を向いて走り出した。

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