《MUMEI》 . 「別に、たいした用事じゃないんで」 断ると、彼女は少し考え込むようにして、 次に、こう提案してきた。 「よかったら、中で待ってる?ホントに、ついさっき、『今から帰る』って連絡があったのよ」 響子は引き戸を大きく開いてみせた。 俺は、高鳴る胸を無視して、 ゆっくり頷いた−−−。 通されたのは、2階にある拓哉の部屋じゃなく、1階の居間だった。 白い革張りのソファーに座らされた俺は、落ち着きなく、キョロキョロと居間を見渡す。 居間の中には、あちらこちらに花があった。 目の前のローテーブルには、透明なガラスの皿が置いてあり、その上に色とりどりの花々がちりばめられていた。 そのテーブルの傍らには、ガーデニング関連の本が、きちんとマガジンラックにおさまっている。 傍にある、レトロなキャビネットに飾られた花瓶。そこには鮮やかな色の花が活けられている。 居間の置くにはカウンターキッチンが、そしてそこにも花が飾られているのが見える…。 「そんなにじろじろ見ないで〜」 恥ずかしいわ、と言いながら、響子はアイスティーを俺に振る舞った。 気恥ずかしくなりながら、俺はアイスティーをいただく。喉が渇いてしかたない。それは夏の暑さだけではなさそうだ。 . 前へ |次へ |
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