《MUMEI》 . これから、どうすればいいのか、 どこへ、進めばいいのか、 まるで、出口のない迷路に迷い込んだように、 全てに怯えきっていた、あの時の俺に、 拓哉は、はっきり言ったのだ。 「プロサーファーになる」、と。 「ヒロトさんの遺志を継ぐ」、と。 そう、真剣に話す、迷いのない拓哉の瞳を見て、 空っぽだった俺の心に、 ………一筋の、光がさした。 新しい夢と希望を、 俺に、与えてくれたのは、 他でもなく、拓哉だった。 「…感謝してるのは、むしろ俺の方です」 俺の言葉に、響子はさらに瞳を潤ませ、 苦しそうに顔を歪めた後、 消え入りそうな声で、 ありがとう…と、 呟いた。 −−−切ない沈黙が、辺りを包んだ。 . 前へ |次へ |
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