《MUMEI》 つまらない飲み会. −−−拓哉の家を訪れた、 あの夜からずっと、 響子の、涙ぐんだ切ない微笑が、頭から離れない…。 彼女に対する抑えきれない気持ちと、 拓哉に対する罪悪感を抱きながら、 悶々とした日々を過ごし、 そして、 金曜日を迎えた。 セミナー仲間との飲み会は、とてもダラダラしたものだった。 若菜は当初、『少人数での親睦会』と称していたが、 集まったのは俺と若菜を含めた、男女各4名ずつの計8人だけで、 結局は、単なる合コンに過ぎなかった。 男どもは誰よりも目立とうとして、やけにテンション高めだし、女どもは、そんな男達に媚びるような眼差しを向け、意味ありげに微笑み合っていた。 下心がミエミエな連中に、正直うんざりする。 「楽しんでる?」 ぼんやりと、仲間達のつまらない会話を聞き流していた俺の隣に、いつの間にか若菜が移動してきて、そう尋ねた。 俺は苦笑し、それなりにね…と、生ビールを一口飲みながら、曖昧に答える。 そのテキトーな返事に、若菜は笑った。 「ずっと、つまらなそうな顔してるよ」 クスクス笑う彼女の顔を見遣り、俺は、バレてた?と、おどけてみせた。そんな俺の顔を見て、若菜は軽やかにまた笑った。 . 前へ |次へ |
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