《MUMEI》 救いの電話. ……くだらなすぎる。 付き合ってられない。 ついに我慢の限界がきた時、 テーブルに出しっぱだった俺の携帯が、突然、鳴り出した。 相手は、昌美だった。 この時ばかりは昌美に感謝した。 俺は鳴り止まない携帯を手に取ると、隣の若菜に一言断ってから席を立ち、バカ騒ぎしている仲間を残して、その場から離れた。 みんなに声が届かないような場所を選んで、 俺は電話に出た。 「もしもし、昌美?」 呼びかけると、すぐに彼女は答えた。 『あら?飲み会なのに、結構早く出てくれたわね?』 つまらないんじゃないの?と、俺の胸の内を見透かすようなことを口にする。 俺はため息をつき、正解、とぼやいた。 「バカバカしくて、話にならないよ。くだらないゲームも始めちゃうしさ」 思わず愚痴ると、昌美はおかしそうに笑った。 『だったら、抜けていらっしゃいよ。車で迎えに行ってあげるから』 そうして昌美は俺に、飲み会の場所を聞き出すと、それなら20分あれば着くと告げた。 『そっちに着いたら、連絡するわ』 「分かった。じゃ、よろしく」 そう言って電話を切ると、俺は早々とみんなの元へ戻った。 昌美がやって来るまで、まだ時間がある。 それまでに、みんなを適当に言いくるめて、ここから立ち去らなければ…。 . 前へ |次へ |
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